ABOUT

以前、大手腕時計製造工場に勤務しておりました。

当時、世界で一番速いサイクルタイムであった「1.2秒/個」の生産ラインを保有する腕時計用ムーブメント製造工場の技術担当です。
しかも生産されるのはCal.PC系と呼ばれるネジを1本も使わない機種。
「熱カシメ」で固定されるため分解修理することができない特殊な構造です。
そのため何か問題が起きると不良品があっという間に山のようになるという恐ろしい製品でした。

正に時間と戦っていたような感じがします。

ある日、ドライブ中に「スイスの時計職人が針の無い時計を作った」という番組を耳にします。
それは「時計はどこにでもあり、どこにいても時刻はわかる。これは動きを見て愉しみ、音を聴いて愉しむためのものだ。」と。

そしてその時計を持っている方がニコニコしてインタビューに答えていました。
「待ち時間が楽しくなったのよ」

衝撃を受けました。
いい時計とは
①正確
②見やすい(見ている時間が少なければ良い)
③できるだけ安く
ではなかったのかと。

そして、その時なぜか一つのクレーム品の記憶がふと思い出されました。

「逆転不良」です。

調査した結果、「ステーターが平面的に変形して、ローターの静止位置が約90度ズレていたため」だったのですが、数ある検査装置をスルーしていったその希少さに不良品ながらも感動してしまいました。

以来、逆に回る時計も面白いもんだなと思い、試作を繰り返して友人に配っているうちに製造・販売するに至ります。

昔の私のように「時間と戦う」「時間に追われる」のではなく、「時間という不思議な存在を愉しむことができる」、そんな時計を作っていきたいと考えております。

※以前はSEIKOさんやCITIZENさんでも逆回転の電波時計が販売されてたのですが、現在では販売されておりません。
通常運針の逆回転時計はさんてるさんからも販売されておりますが、電波時計の逆回転仕様の販売は日本では当工房のみとなっております。
珍しい逆回転時計で楽しい時間をお過ごしください。

【時を楽しむ 未来時計工房】
一級時計修理技能士 小場裕之