about

以前、大手腕時計製造工場に勤務しておりました。

そこには当時世界一サイクルタイムの短い腕時計の製造ラインがあり、私は技術担当としてQCDを追求しておりました。

少しでも早く、安く、いいものを作るために、時間と戦っていたような感じがします。
この時に一級時計修理技能士の資格を取得しました。

時計製造ラインがシンガポールや本社へ移管されて時計事業が縮小していく中、新規事業(ミニチュアベアリング製造)が立ち上がり技術担当に。

コストを下げるべくシールドの特許を取得するも、数年後にはそのラインもタイへ移管されることになりました。

また新たな事業(携帯電話の液晶モジュール製造)が立ち上がって数年後、またその事業も海外へ移管することが決まったところで、会社を辞めて農業を継ぐことにしました。

収入は激減しましたが、自由な時間を手に入れることができました。
家族との旅行にも行け、好きな本を読み、今までの狭かった世界観が広がっていきます。

ある日、ドライブ中に「スイスの時計職人が針の無い時計を作った」という番組を耳にします。
それは「時計はどこにでもあり、どこにいても時刻はわかる。これは動きを見て愉しみ、音を聴いて愉しむためのものだ。」と。

そしてその時計を持っている方がニコニコしてインタビューに答えていました。
「待ち時間が楽しくなったのよ」

衝撃を受けました。
いい時計とは
①正確
②見やすい(見ている時間が少なければ良い)
③できるだけ安く
ではなかったのかと。

そして時計技術部門にいた頃、一つのクレーム品の解析依頼が私のところに届いた事を、ふと思い出します。

「逆転不良」です。

Cal.(キャリバー:型式)はPC21。
低価格帯の腕時計に使われるムーブメントです。
(ネジが一本も使われていないプラスチックを多用した構造)

原因は「ステーターが平面的に変形して、ローターの静止位置が約90度ズレたため」だったのですが、組み込み不良が起こらず、かつ他部品とも干渉しないその絶妙な変形具合に、不良品ながらも感動してしまいました。

それを思い出して以来、逆に回る時計も面白いもんだなと思い、試作を繰り返して友人に配っているうちに、いつしか製造・販売するに至ります。

昔の私のように「時間と戦う」「時間に追われる」のではなく、「時間という不思議な存在を愉しむことができる」、そんな時計を作っていきたいと考えております。

※以前は大手時計メーカーで逆回転の電波時計が販売されていましたが生産終了となりました。
現在、逆回転電波時計の販売は日本では当工房のみとなっております。
(電波ではない通常の逆回転掛け時計は各メーカーにて販売されております。)

逆転時計のお店【未来時計工房】
 一級時計修理技能士 小場裕之